リゾートや行楽施設よりも歴史を感じることが出来る場所を旅するのが大好きな小泉八雲の孫の孫、守谷天由子です。
出来ればよりリアルな。
そう思っている人の中にはわたしのように廃墟好きの方もいらっしゃるのでしょうか?
エストニアのソビエト連邦時代の刑務所跡 とか日本にお化けつれて帰ってきちゃったにもかかわらず大好きですし、ラトビアの森の中にある火力発電所跡の鉄の曲り方とかジュエリー学校のメタルクラフトコース出身としてはWow!! を連発しちゃうし、ベルリンの冷戦時のレーダー跡地で拍手しちゃうし、有名どころだと厳密には廃墟ではないけどニューヨークのWorld trade center 1 に5時間いちゃったり。
ディズニーランドから徒歩30分の場所に住んでいた反動かもしれませんが、夢の国よりリアルな街。資本主義に縛られた旅行なんて楽しくない!と思っています。
閑話休題
本当に廃墟に住んでる人なんているの?
廃墟:建物,市街などが人為的あるいは自然の破壊によって長らくうち棄てられ,機能を失って荒れ果てた跡。
に住んでいる人が世界に何万人いるかはわかりませんが、私は確実に3人知ってます。
いずれもスロベニア人。
人口200万人しかいない旧ユーゴスラビアの国で、有名なものも。。。特になくて首都のリュブリャナ中央駅には2013年にエレベーターがなくて。。。そんな場所です。今はあるかな?
そんなさっぱりした中央駅から歩いて10分もしない場所にその廃墟はあります。
東京で行ったら東京駅のみんなが天井の写真を撮るあたりから銀座4丁目交差点ぐらいの距離でしょうか。
その名も
Tovarna ROG
https://en.wikipedia.org/wiki/Rog_(factory)
ユーゴスラビア時代に国最大の自転車工場があった場所で1991年に閉鎖。
その後、若手アーティストの作品の発表や制作の場になったりしていた場所で、ベルリンをちょっと知ってる人に説明するならばスロベニア版タヘレス( Tacheles ) とでも言った所でしょうか。
訪れた際のinsagramの記事はこちら
有名なアーティストの壁画もあります。
私がその存在を知ったのは2017年。スロベニア4度目の訪問中でした。
いつもお世話になる友人夫婦を最初に訪ねたのは2013年なので、なんでこんな楽しいとこなんで今まで連れてってくれなかったんだろう。。。といじけると
「え?アユコこういうの好きなの?」
だぁいすきだよぉぉぉぉお!
「ん〜でもさ、機関車の駅舎跡のテアトルとかあるじゃん。メテルコバなんかは軍の基地跡のライブハウスだし。だからあんまりすごいって思わないの。でもアユコはトーキョーから来たんだもんねぇ。」
と、気持ちを汲んでくれました。
その、ROGの2017年夏の状況はというとシリアやアフガニスタンなどから難民としてやってきた人達と彼らを取り巻くボランティア(友人も)たまり場。
住む所が見つかっていない難民の方も少しだけ住むように暮らしていたり。
そんな簡単に住めるもんなの?ととたまっていたスロベニア人のおじさんにきいたら
オレ、11年目だけど?
ふぇ?
「住所も機能してるし、電気と水道は公共の奴から引っ張ってきてるからもちろんタダだし。水もお湯もちゃんとでるよ〜!ま、ちょっと寒いけどね。音楽とかやり放題なの、最高だよね!え?法律違反だねぇ。」
だそうです。
その3日後ぐらいに身内で勝手にクラブみたいに大はしゃぎしてたら夜中の3時頃にポリスが来て超焦ったんですが、うるさいよって言いにきただけでした。
ちなみに11年目の彼はガールフレンドと同棲中。
お金は日雇いの仕事などをしてなんとか食いつないでいるとのこと。
ご飯はどうやら難民支援のボランティアのついでに食べれてるみたい。
彼は酒もタバコもやるし英語もきれいだけど、歯が汚いです…。
保険に入ってるかは訊き忘れました。
うーん、僕は住んで3年ぐらいかな?
と答えてくれたのはモデル風でソバージュが緩んだようなロングヘアがにあうお兄さん。
ちょっとした頼み事があり、滞在中にまた会うことになったのはいいものの
「今、ケータイ電池切れてるから彼ら(滞在させてもらってる夫婦)にでも連絡先きいてよ!」
ということだったのでお家に帰って訊きました。
「ねぇ、そいつどんな服着てた?」
えー。黄色いTシャツだったかな?
「うんわかった。ボトムは?スカートはいてた?」
どんなのか覚えてないけどスカートだったらTシャツの前に伝える。きっと。
「えーっとねぇ、うーん、アイツはねぇなんっていうか〜人格が二つあるの。で、俺が知ってるのはガールの方の連絡先なんだよね。だから教えていいものかどうかちょっと。。。」
そんな理由で困惑しているとは想像できませんでした。
ごめん。
お返事が斜め上すぎてリアクション難しいでーす!
ちなみにその広いお部屋に住んでいる彼(彼女)は人がやってくるのが好きなようでインテリアをカフェ風にしてお茶をもてなしてくれることも。
そうはいってもトイレを汚くされるのが嫌いなようで
’’自分のうんちはきちんとワイプしましょう!’’
との文言まで添えている。さすがに中の写真はとっていませんが。
きれい好きな所に好感を持ったのも束の間、
蚊が多くてさされまくるのでウナコーワクールや虫除けスプレーを多用していた私。
君も使う?
と親切に訊いたところ。
「僕は蚊の栄養に喜んでなるよ。それがネイチャーのサイクル。」
だそう。なんてヒッピーなの。虫さされって下手したら死ぬというのに。
ちなみに彼(彼女)のお部屋は本当に素敵なのでデザイナーをしているブランドApocaθist(アポカシスト)の撮影場所として使わせてもらいました。
バックの自転車のフレームの塗装がいい感じ。
モデルのニナさんにはすべてチェロの弦を生まれ変わらせたジュエリーをつけていただいています。
実はバイオリニストだけどチェロもサックスも出来るし鉛筆画が超絶上手いです。
個性的な部屋主にも物怖じせず、スロベニア語でコミュってました。
次に行くときはどんな風になってるんだろう。
”一度愛し捨て去った土地を再び訪ね、無傷でいることはできない。”
とは高祖父の小泉八雲の言葉。
スロベニアは確かにこなれ感が増してきているので行く度に寂しい気持ちは感じています。
ROG大好きな友人曰く、
「ROGはめちゃ便利な場所にあることもあるからデパート化するかもしれない。いや、多分するんだろうな。弁護士つけて戦ってるけど多分勝てないと思う。」
そうです。
傷を負ってもいいからずっと見守っていきたい場所に住んでいる、クレイジーな奴らのお話でした。
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