小泉八雲(Lafcadio Hearn)とその母ローザ カシマチが最後に言葉を交わしたのは1854年、まだラフカディオが3歳か4歳の頃でした。
詳しい人生については別記事で綴っていますが、まさか二度と会えない運命とは思ってもいなかった2人。
そんな悲しい出来事が元でローザおばあさまは故郷のキシラ島から入院することを理由に精神病棟のあるコルフ島へと1872年にやってきます。
ローザが入院していた病棟の現在
建物はそのままにイオニア大学の校舎及びオフィス、また一部はクリニック(外来)として使われています。
総合病院という訳ではないので案内板もこじんまりとしています。
RPGゲームのようにこの場所の昔の姿について知識のある人を人伝いに探しまくり、
中にはLafcadioの話を読んだことがある大学の先生( IT系というところがまたうれしい!)にも出会い何人かを経たところで
「そう言うことならマリアに聞くといいよ!あっ、でもマリアたくさんいるから名字も書いてあげるね!」
ということで3日掛けて出会えたマリアさん曰く
「ようこそ!あなたのおばあちゃんがなくなったのは1872年なのよね。大学が設立されたのは1984年なんだけど、100年以上前のことでどこの病棟だったのかはわからないしそもそも大幅なリノベートをしてるから建物の中で当時を感じることはできないわ!」
とのこと、でも
当時の写真を見せてもらうことに
こちらは男性棟の食事風景とのこと。
外から見ると窓が似ています。
余談ですがギリシャはヨーロッパの中では地震が多い地域。
そういった背景もあり都度リノベートなどは必須なのだそうです。
マリアさん曰く、
「内装は変わってるけどこのお庭の景色は変わらないんじゃないかしら?」
とのこと。
また、病院内に小さな教会もあったそうで宗教に縋っていたローザは頻繁に通っていたに違いないのですが今はもうありません。
私が残念がっていたのを汲んでくださったマリアさん、
「あのね、病院時代に使われていたものを展示している小さなミュージアムがあるの。1年に1回だけ公開するんだけどあなたの場合は状況がかなり特殊でしょ?開けてもらえるか聞いてみるわね!」
翌日、特別公開のミュージアムへ!
小さくないじゃんって思うでしょ?
地下にあるのがそのミュージアムでなのです!
建築に関しては詳しくないですが上のオフィスに関しては増築したようにも見えます。
鍵を開けてくれた職員さんに写真を撮っていただきました。ボケてますが大きさ、伝わるでしょうか?
ちなみに私の身長は148cmです。
外は暑いですが中はひんやりとワインセラーのような心地。
防空壕のような使い方をされたこともあったのだそうです。
奥にある服はギリシャ正教の信者がお祈りのときに着ていたものと言われているのだとか。
小さいから子ども用かもね、とも仰ってました。多分わたし、ヨユーで着れます。
言い伝えによるとローザさんは晩年ぽっちゃりしていたそうです。
現在使われているものとどう違うのかは専門家でないのでわかりませんが、医療器具の展示も。
手前のものは今で言うAEDのようなものだそうです。
少なくとも大学設立の1884年よりも前に電気ショックが心臓マッサージに使われていたとは、ヨーロッパの医療を目の当たりにした江戸時代の人たちがびっくり仰天するのもなんだかわかります。
かなり使い込まれている、ギリシャアルファベットのタイプライター。
Ρόζας (Rosa) の名前も何度打たれたことでしょうか。なんせ、亡くなるまで10年もいたようですから。
タイプライターはラジオの上に乗っています。
使えるものは使うのでしょう。
帳簿的な何かと思われる本と大量のスタンプ。
全部似ていて間違えそうです。絶対私ならやらかすなぁ。
ミュージアムの規模はこのようにとても小さいので英語の記述は一切なし!
職員さんの英語も親切ながらもたどたどしい、日本人のそれを思い出すような会話でした。
ちなみにLafcadio Hearn を知っているか伺ったところ、
「らぁふかぁでぃお?ひぇ?」
ってな感じだったので今回のイレギュラーなオープンは八雲おじいちゃんパワーではありません。
極東の島国からはるばるやってきた異国の小人に対するもてなしの心に触れた翌々日、私はラフカディオ生誕の地レフカダへと旅立ったのでした。
他の記事でご紹介しているように偶然に偶然が重なり天国からの引き寄せを感じたコルフ島での滞在でしたが、ギリシャでは思うように事が運ばないのは何となくわかっていたことも事実。
時間に余裕を持った旅にしていたからこそ訪れることができたこの博物館。
歩数計の数字はまずまずですが、この場所で感じた気持ちはなんともこみ上げて来るものがありました。
展示品のものそのものの価値を考えた場合、それほど高価なものではないかもしれません。
ですがコルフの人々がリスペクトの心を持って小さいながらも歴史を伝えてくださっていることに関しては子孫を代表して感謝いたします。
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