ギリシャ旅

小泉八雲の母 ローザの眠る墓は何処?情報に振り回された結果…

小泉八雲の母親のローザ カシマチが生涯を終えたのはイオニア諸島合衆国(当時)の首都であったコルフ島の精神病棟でした。

在ギリシャ日本大使館のページを見たところ、お墓らしき写真が “キシラ島のローザとカヴァリーニ家(彼女の第二の家族)の墓” として紹介されています。

どこにあるのか気になったので大使館とコンタクトを取りキシラ島のどこにあるのかご存知ではないでしょうかと訊いたところ

「お墓があるの、コルフ島ですよ。」

ローザが10年間を過ごし生涯を終えた病棟。現大学。

えええええええっ?

亡くなったのはコルフ島なのでそれが事実だったとしてもおかしくはないのですが、混乱します。

しかもそのやり取りをしたのは私がコルフ島を離れる2日前。

大使館の方にご紹介いただいたキシラ島の識者の方に伺ったところ

「少なくともキシラにはないし、150年以上も前にコルフ島からここまで船で遺体を運んだとは考えにくいです。」

一理あります。

今よりイオニア諸島の人口はかなり多かった(キシラ島に関しては3~5倍)とは言え飛行機はまだない時代。
フェリーも1日以内ではきっとたどり着けない距離でしょう。

亡くなったのは12月12日と、夏場ではなかったものの運ばなくていいなら運びたくないのは間違いないです。

また、ローザの精神病棟での名字は “カシマチ”。

そう、2番目の夫の姓であるカバリニスを名乗ってはいないのです。

イオアニス カバリニスと離婚をしたと言う事実は残っていませんが、精神を病んでしまったローザは追いやられるような形でコルフ島に行ったと考えることも想像出来てしまいます。

病んだ原因が結婚前に産まれた息子たち(Lafcadio含む)となればいい顔はしないでしょう。

船関係の仕事をしていたイオアニスと夏の間暮らしていた場所。アフロディーテ伝説で有名なアブレモナスにあります。

 とりあえず写真のお墓を目指す

キシラ島現地でリサーチを重ねたところ、アギオ スピリドン(St. Spiridon) という教会の敷地内の墓地にあるものが写真のお墓だということがわかりました。

ちなみに、Google mapsには載っていませんが地元人に言えば大体あそこね!とわかってくれます。

偶然でしょうか。アギオ スピリドンはコルフ島で最も有名な教会の一つ。

そこには聖人スピリドン(270〜348)のミイラがあり、毎日午後5時に行われるミサに参加するとお目にかかることが出来ます。写真禁止ですがGoogle Imageで見ることができました。(リンクは張りません。)

St.Spiridonの鐘楼(コルフ島)タイミング悪いとごった返します。

わざわざロシアなど正教系の国からこの教会を訊ねてくる人もいるのだとか。そういえばロシア語ばりばり聞こえてました。

場所はローザが入院していた精神病棟(現イオニア大学)から徒歩で行ける範囲。
宗教狂いのローザおばあさまですから訪れたことがあると見てほぼ間違いないでしょう。

ちなみに彼女の命日12月12日はなんとSaint Spyridon’s Day。
葬儀が行われたのは12月18日ですが遅くなった原因はそれにあるのかなぁと想像してみたり。

St. Spiridon in Kythira

キシラ島のスピリドン教会はカプサリ村の小高い丘の上にあります。
St. Spiridonの墓地。落ち着く景色です。

さて、どこにローザが眠るとされる写真のお墓があるのでしょうか?

カバリニス、及びカシマチの文字を探しながら夕暮れ時の墓地を歩きます。

なんてこった!

ローザではないもののΚασιμάτηの文字が!

思わず腰を抜かしそうになります。が、ローザではないのと既にカシマチという姓は言う程珍しくないということは知っていたので探し物モードにすぐ戻ります。

あった!けど…

これこれ!大使館のサイトにあったお墓!

お墓の名前にはローザの第二の夫であるイオアニス カバリーニの名前(二段目)がありますが、ローザに関しての情報は全くありません。

なお、いくつかのサイトや文献でキシラ島に小泉八雲の母のローザのお墓があるとの記述を見かけました。
中にはこのお墓の前でローザを想ってお経を唱えてくださった方なんかもいるらしいのですが、

…ここにお眠りではないようです。

っていうか政府の金使ってリサーチするならちょっとぐらいギリシャ語読めるようになってから行ってくれよ!というのは自腹で旅をする一子孫の意見です。

とは言え、私もローザのお墓はわからないままギリシャを後にしました。

ローザが亡くなった頃、息子のLafcadioは恐らくニューオーリンズにいた頃と思われます。

そして母ローザの亡くなった22年後に東京で生涯を終えました。

私がこの記事を書いているのは小泉八雲が亡くなったちょうど125年後の9月26日。

生前長い間音信不通でローザがキシラ島の出身であったことさえ知らなかったかもしれない息子の八雲は

”どんな大金を払ってでも母親の肖像画が欲しい”

と言っていたのだとか。
これは原文である英語で彼の著作を愛読する出版業界人から聞いた話ですが

「Lafcadioはさ、なんつーか女性に関しての信仰みたいなのあるよね!やっぱりお母さんを理想に掲げてるんじゃないかなって感じの文章書いてるよ。だって、幽霊みんな女なんだもん!」

とのことです。

既に文筆業はスタートしていた頃にローザは亡くなりましたがまさか息子がアメリカのルイジアナ州にいるなんて思っても見なかったでしょう。
そして、家族に見放されてコルフでひっそりと生涯を終えたローザは共同墓地あたりに埋葬されているのでは?と勝手に想像しています。(情報ご存知の方、いらしたら是非ご連絡くださいませ。)

さぁ、天国で親子仲睦まじくおしゃべりをしているであろうローザおばあちゃんとラフカディオおじいちゃんに私が会えるのはいつになるかしら?

確認したい事だらけで向かう予定です。

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ABOUT ME
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守谷 天由子
ギリシャとアイルランドの両親を持つ明治の文豪、小泉八雲 (Lafcadio Hearn) の孫の孫の守谷天由子(もりやあゆこ)です。 文系か理系かと言われるとアート系のジュエリーデザイナー。 八雲と同じく異文化に触れる旅やウィスキーが大好き! 2017年に5カ国に渡る足跡ツアーを4ヶ月かけて自力で回りました。 道中出会ったアイリッシュ夫と海辺の町で暮らしています。