プロパガンダ(Propaganda) : 国家などが組識的に行なう主義・教義などを世に伝えるための宣伝
老若男女に対してメジャーな娯楽である映画をプロパガンダに使う手腕はまぁどこの国や地域でもあり得ることなのでアメリカが
日本って
こんなにヘンテコなんだよ!
ぶっつぶそうぜ!
という映画を終戦の直前に作ったことに対しては驚きはないものの
真実はさておき
歴史もちゃんと遡って調べてるし
はっ!
とする程よく出来てる!
と日本人の友人にお勧めされたこともあり、観てみました。
痛いとこつく!Know your enemy Japan
邦題は “汝の敵日本を知れ”。そのまんまですね。
アマゾンのリンクはこちら。
監督はあのフランク キャプラとあって構成もわかりやすく、テンポの良さも相まってあれよあれよという間に1時間後見終わった頃には日本に嫌悪感を抱かずにはいられなくなる仕掛け。
タイトルでも述べたようにディズニーがドキュメンタリー映像の合間のアニメを担当しており、その芸の細かさはブラボーを送りたくなるクオリティです。
私自身は多様であること、文化が入り交じっている環境にいることが居心地がいいと感じるので終戦直前の1945年にアメリカで作られた(すぐ終戦になったので公開はされなかった。)この映画について、多少の虚報はお互い様としつつも興味深く観ましたがガチガチの右翼の方がご覧になったら怒り狂ってしまうであろう記述もちらほら。
右翼が怒りそう4連発
焼き増し写真のように皆同じ顔
アーミーのユニフォームくそダセぇ!
だまし討ちの技、それが武士道
奴らは本物の自由を知らない
などなど。
焼き増し写真の下りに関してはそう言う映像をチョイスしているせいもあるとは言え、兵士も学童もヘアスタイルが皆丸坊主 or 女児はおかっぱ頭なのはギリギリ昭和に生まれた私から見ても滑稽に見えます。
満州国で生まれ育った祖母の学校の集合写真を見たことがありますが引きで観るとクローンみたいだなぁと幼心に感じた記憶もうっすら。
ちなみに当時三つ編みヘアをしたいがために母親に楯突いて髪を伸ばしていた私がおかっぱを羨ましいとは思うはずもありません。
ジャップのユニフォームダセぇ!に関してはぐうの音も出ませんが欧米に比べて物資が不足していた日本は贅沢言えなかったでしょう。
余談ですが当時の同盟国ドイツの軍服は著名ブランドHugo Bossがデザインしており、ばっちりかっこいい。
それが志願兵を増やした一つの理由とも言われているそうです。
ファッション、大事大事。
“だまし討ち=武士道” というのは武士の末裔(高祖父である小泉八雲の妻の家系は島根や滋賀にルーツを持つ武家)の名に掛けて断固否定したい気持ちもありますが…
もちろん武士が伝えてきた美しい教えや文化もありますがあえて賛美する説明がプロパンダ映画にあるはずがありません。
(しかし、戦死した旦那さんの墓の線香から火をもらってタバコを吸う奥様の描写にはゾクっとした。悲しくとも芯のある、筆舌にし難い色気を感じました。)
また、冒頭ではナチスドイツに果敢に立ち向かった日系のアメリカ兵を讃えるなどしているところからも、視野の広いというか、日本のように
「カタカナ語全面禁止!」
といった姿勢はないように見て取れます。
「あくまでも冷静な立場で編集された映画です!」
と言うポーズだったとしても人の中身を見ずに見た目で差別したり、カタカナ語の会話含め西洋のものを(同盟国のドイツやイタリアとの区別もつけられずに)一切禁じるなど排他的な行動を取っていた日本の上を行っていると言わざるを得ません。
ちなみに神道を説明するシーンでお坊さんが鐘をゴーン!してます笑。さすがに突っ込む人はいなかったのかな。
正鵠を射ってくるフランク キャプラ
兵士に対しての記述もお見事と言うべきかなんと言うか、天皇に忠誠を誓って国のために死ぬのが最大の喜びというのを(もちろん賞賛するような言葉は使わずに)2600年間の神武天皇国家としての歴史を踏まえて表現しており、サクッとまとめられた日本の歴史についてはほぼ日本人の私も改めて勉強になった次第。
日本の歴史番組よりよっぽどわかりやすく世界観にも引き込まれるがゆえにジャパンがいかにクレイジーかするすると頭に入ってきます。さすがディズニー。
“エンペラーヒロヒトはルーズベルト、チャーチルをはじめとするそれぞれの国の首脳や神職者に加えてイエスキリストのように神格視されており全国民に讃えられる存在!”
という表現にはちょっと笑ってしまいましたが当時を生きる中で天皇を侮辱したら勘当ものでしょうし的を得ていると言えば的を得ています。
“よく出来た軍隊の忠誠システムは個人の思想を育む隙もない学童の頃からの画一的な型にはめた教育の賜物でドイツの総統ヒットラーも羨む程に奴隷根性が座っている。”
というネタだけでも映画が作れそうですが、テンポ重視でさらっと述べるのみ。
“殺されるぐらいなら自ら死ぬ!それはたった92年前に開国した日本においては芸術とも言える武士の切腹の名残とも言え、家柄が農民だったとしても兵士になることが出来るその時代に置いて国に命を捧げることは美徳とされており靖国で会おうと言って兵士同士が別れを告げるのだ。”
なんて、知ったこととは言え英語で言われると何ともパンク。
小泉八雲の次男であり英語教師であった曾祖父、稲垣巌が40歳で生涯を終える来なく大戦中を生きていたらどんな気持ちだったんでしょうか。
夭逝は残念ですが英語を操ることが出来るが故に日本軍に本心に逆らわざるを得ないような使われ方をしていたのだろうなと思うと気持ちの行き場がありません。
話はそれますが小泉八雲の孫と結婚した私の祖父の父親(巌と同じく曾祖父)は陸軍中野学校出身のスパイで大戦中は主に大連でこっそり(言わずもがな)仕事をしていたそう。
玉音放送が流れる前から敗戦を知っていたことを自慢げに父に話していたとか。
カミカゼアタック特攻隊についての説明は制作時期と同時ぐらいだったと考えられるので掘り下げられることはなく最後のシメのクレイジーさの仕上げとしての映像のみでしたが
「こんなにも理解不能な民族はこの地球に存在しているのが悍ましい!!ここは新型のアトムボンブでドカーン!がぴったりだ!」
という思想が生まれることも想像できるような編集。
映画がリリースされたのは長崎に原子爆弾が落された1945年8月9日。
その後すぐに日本が無条件降伏をしたのでこの映画は一旦お蔵入りとなったのでした。
余談ですが原子爆弾は当初ナチスドイツ率いるドイツに落すために開発されたそう。
5月、ヒットラーが自殺したのと同じタイミングで日本も降伏していたら救われた命や守ることが出来た健康や尊厳がいくつあったのでしょう。悔やみきれません。
ちょっと一息小泉八雲
高祖父Lafcadio Hearn こと小泉八雲は1890年に来日してから知られぬ日本の面影 (Glimpses of Unfamiliar Japan) をはじめとする日本の美しさや神秘、文化や天皇家の歴史を含む思想を伝える著作を主にアメリカに向けて発表しました。
晩年の14年間を日本で過ごす中で嫌気の指すことも多数あったのですがその中のひとつが自身も教壇に立った学校教育にあります。
生徒は真面目だけれどもひとつの答えを求めようとする様や宿題の感想文でクラス全員が似たような内容を綴っていたことに対して違和感を覚えたとも言われており、それは西洋嫌いであった八雲自身でさえも教育に関しては西洋に遅れをとっていて創造性が著しく足りないとも感じていたそうです。
1894年に開戦された日清戦争の勝利に代表されるように日本が上り調子だった当時に書かれた晩年の八雲の著作
” data-wplink-url-error=”true”>『神国日本〜Japan-An Attempt at Interpretation〜』は、太平洋戦争中、アメリカ合衆国の対日本心理戦に重要な役割を果たしたとされる。はアメリカの軍事や政治を動かすような人たちが日本の神髄を知る手がかりになりました。
マッカーサーの側近がLafcadio Hearnを愛読していたことは敗戦国となりながらもアメリカの植民地とならずに天皇制が続いたこと、美術品の強奪はあっても文化そのものが根底からひっくり返ることがなかったことの理由のひとつとも言われています。
1945年に作られたプロパガンダ映画 Know your enemy Japan は「ジャップくそヤベぇ!」との思想をアメリカ国民に植え付けるのが目的の映画のため手榴弾を咥えた2度と動くことのない兵士など残酷な映像も躊躇なく流れる映画です。
「壮絶な最期を遂げた仏様には耐性がないわ。」
という方にはおすすめできませんが当時の日本の貴重映像の数々だけでも見物。
アイリッシュ夫はレイシズムに元づく映画など絶対観ないと言い張るので観た人との議論がしてみたい、昨今です。
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