このお話は毎週土曜日の朝に参加しているクラブハウスのフレンチカリブのお部屋のテーマが小泉八雲だったときにマルティニーク出身日本在住のフランソワさん(日本クレオール学会)に
マルティニークにも耳なし芳一みたいなお話があるんですよ!
と教えていただいたもの。
お部屋終了後に英語やフランス語、クレオール語の様々な言葉で検索をかけるもお話のページは見つからずにヘルプを求めたところ
この話は、タイトルさえもないです!
と顎を外したので伺ったお話 (日本語) を元に再編してみました。
ターバンを忘れた女〜煮えないキャッサバの怒り〜
ある日、女は夕食の準備のためにキャッサバ(タピオカの原料ともなる芋)を煮ていた。
湯が沸騰しそろそろ煮えたかと思うもまだ硬い。
ああ、ちょっと大きめだったかしら?と長めに煮たところで一向に柔らかくなる気配はない。
何か悪いことが起きる前触れだったらよろしくない、と女は村のシャーマンを訪れた。
「いくら煮ても、キャッサバに火が通らないのです。何か方法はありませんか?」
「ほう。それは…そなたがキャッサバの怒りを買っているのだ。
その怒りを抑えるためにどうすればいいかとな?
それはだね、何も身につけずに裸で煮てごらんなさい。
さすればきっと美味しいキャッサバが食えるであろう。」
女はシャーマンの言う通りに衣服を脱ぎ、裸で料理をした。
それは熱を使う料理をする上で危険なことだとはわかっていた。
しかし、女はシャーマンの忠告に従った…つもりであった。
湯が沸騰ししばらくしたので恐る恐る女は裸でキャッサバを覗きに行ったところ、なんと女の顔を目掛けてキャッサバを煮ていた熱湯が襲った。
なんということか。女は毎日つけているためにもはや体の一部となったターバンをとるのを忘れたまま料理をしていたことでキャッサバの怒りを買ってしまったある。
程なくして女は亡くなった。ターバンをしていたばかりに。裸で。
奇しくも、私の高祖父母が再話文学を世に広めた時のようなプロセスを私も踏むことになり、マルティニークのお話ではありますがちょっとご先祖様と対話をしたような気分になりました。
また、 私は “キャッサバ” としましたが現地マルティニークの言語、クレオール語では “イモ” として伝わっているようです。
ジャガイモではないだろうとのことでカリブっぽさを話に織り込むためにもマルティニークでメジャーなキャッサバを採用しました。
そもそもマルティニークってどんなところ?
マルティニークはカリブ海に浮かぶフランスの海外県(フレンチアンティル)で共通語はフランス語、島民の間ではハイチやグアドループなどでも通じるクレオール語が使われています。
近隣において一番日本でメジャーな国はキューバかドミニカ共和国でしょうか?
日本から行くとなるとパリで国内便(!)に乗り換えるのが一番スムーズなようで、フランス本土の人たちのバカンス先としても人気だとか。
人口は約40万人。
主要産業は観光業でご飯もクレオール料理が有名です。
もとい小泉八雲がマルティニーク行きを決めたのは10年間のニューオーリンズ生活でクレオール文化に惚れたからだと言われています。
その中で現地の方々の取材に基づいたクレオール料理本も執筆。
なんとこれは世界初のクレオール料理のレシピを紹介した本だそうです。
また、ニューオーリンズで出会った素朴なお菓子、プラリーンのレシピが一番詳しく日本語で書かれている記事は、拙ブログです。
年間通して温暖ですがハリケーンのシーズンなどは訪れるのに注意が必要。
現地の方曰く、2月のカーニバルシーズンあたりが過ごしやすくてオススメだそうです。
現地で小泉八雲の名前はあまり知られていないのですがLafcadio Hearn Market, Parking, Street があるんだとか。
小泉八雲のマルティニーク生活
小泉八雲がマルティニークに滞在していた期間は2年間でした。
14年間を過ごしたとは言え日本語に関してはあまり精通しておらず、その代わりと言ってはなんですがフランスで教育を受けたこともあり仏英翻訳の仕事もしていました。なので、マルティニークにおいて言葉の壁はきっとなかったと思われます。
本来なら数ヶ月の旅行の予定だったようですが程なくして天然痘が流行りアメリカに帰ることができなくなってしまったとか。(あ。私もコロナで日本からの飛行機が飛ばなくなってしまい、アイルランド移住が4ヶ月遅れました。)
その甲斐あってかTWO YEARS IN THE FRENCH WEST INDIES という著作を通じて奴隷制度廃止からあまり時間の経ってないのマルティニークという島を英語世界に広めた最初の人物となったようです。
余談ですが同時期に画家のポールゴーギャンもマルティニークにいました。
二人とも世界に名を馳せる前だったのと前述の通り伝染病が流行っていたので交流があったかどうかは…天国で逢えたら聞いてみましょうか。
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